革漉き包丁  道具や機械1

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刃物というのはもの作りには欠かせない道具です。

靴作りにも包丁を使います。その包丁は、革製品の作成に使われますので、靴専門の靴包丁ではなく、革漉き包丁と呼ばれます。

革を切るのではなく、斜めに削ぐようにしたり、厚みを薄くすることを、漉くと言います。

 

ちょっと変わった形をしています。

houchou (1)

最初の画像のように、使う人の好みや、使う場所によって、いろいろな刃の幅があります。

ここにあるのは30ミリ幅と36ミリ幅ですが、20ミリ幅、25ミリ幅、40ミリ幅などいろいろあります。

 

この革漉き包丁は、「ヘラ」として、革用の包丁という使い方以外にも、いろいろなところで使われています。

これは、お蕎麦屋さんで、天ぷら鍋の掃除用として長年使われている革漉き包丁の写真です。

marufuku

また、カッターナイフメーカーのOLFAから出ている刃先交換式の革漉き包丁もあります。

olfa

この形の革漉き包丁は、OLFAの物かは分かりませんが、海外でも販売されているようで、私がいたドイツの工房でも、「ヘラ」としてですが、使われていました。

製作作業にはいろいろと不向きですが、ルッチェでも、掃除用にはこれを使っています。

この革漉きは、刃先交換式ですが、当然研げますので、切れなくなったら研いで使うことも出来ます。

 

ヤハズ鏝(ゴテ)-希少な存在になりつつある道具たち

日本で靴作りの道具を作っている人がどんどん減っている。
いや、それは数年前の話か。いまやどんどん減るほどいない。それどころか、ほとんどいない。
海外でも減ってはいるが、まだ作っていて、日本でも輸入している人はよくいる。

先日、日本製の新品だが昔作られた靴作りの道具を沢山見た。珍しい道具の、始めて見るサイズの物等あって、それはまだ新品だったが、製造は昭和40年代だった。

つまり、新品の道具はどんどん減り、作り手は既に居ないと考えるほうが正しいのかもしれない。

そんな道具の中に、コバ鏝(ゴテ)というものがある。靴底の側面をカチッと極めるための道具だ。

こういうコバ鏝が、幅や形でいろいろと必要な人というのは、たいてい手製靴の職人なのだが、中でも手縫いの靴を作る人には必需品である。

昔の職人は、こうした鏝(コテ)類を、正月に作ったものだと、私が初めて靴作りを教わった方は言っていた。数年前に亡くなられたが、ご存命なら90歳を越えていらっしゃる。だから戦後すぐ位の話だ。

今の靴作りをする人たちも当然、熱心にこうした鏝を作っている。作っているというのは言いすぎか、仕上げているといったほうが言いかもしれない。

普通、鏝(コテ)類に限らず靴の道具は、そのままでは使えない。

きれいに形を整え、磨いてつるつるにしてから使う。
この作業は行うが、自分の好みに合わせてゼロから作るという人はあまり聞かない。

私は必要な場合は自分で自分の好みの幅のコバ鏝(ゴテ)を作る。

最もポピュラーなコバの形は角型だが、上下の角を大きく落として、側面を2つの斜面で構成するコバの形で、「矢筈(やはず)」というものがある。

このヤハズのコバ鏝(ゴテ)も見かけることが少なくなったため、自分の仕上げたいと思う形にするには、そのサイズの鏝(コテ)を自分で作る必要がある。

自分の思い描くコバに仕上げるのに必要なコバ鏝(ゴテ)の幅は、数を作るとわかってくる。
そのコバの幅に仕上げるためのコバ鏝(ゴテ)は、どうしても自分で作るより仕方が無い。

今後コバ鏝(コテ)が全く手に入らなくなるとは考えにくいが、思い描く靴を思い通りに作るための道具が世の中に無い場合、自分で作る必要が出てくるかもしれない。
今後の靴作りには道具作りも必要な能力の一つになるだろう。

921において、通常カリキュラムでコバ鏝を作ることは無いが、特別授業や、個人での取り組みはサポートする。

やり始めると没頭してしまい、時間も忘れ、食事も後回しになってしまう、ある意味で危険な作業だ。

靴作りをやるなら、この面白さもぜひ味わってみて欲しい。