ビスポークシューズの製作は相手の好みを知ることから-921のカリキュラムで出来ること

寸法を測り、注文者の木型から作る靴のことをビスポークシューズと言います。
15年ほど前にあった手製靴ブームで随分知られるようになった言葉です。

オーダー靴と言うと、広い意味ではパターンオーダーや、その他受注後に生産する靴全てを含んでしまうため、ここでは他と区別するためにビスポークシューズと言うようにします。

手製靴をカリキュラムの主柱に置く靴学校では、このビスポークシューズを作れるようになることが目標です。

当校のカリキュラムでも、大切な要素の1つとして位置づけているので、どんな流れで製作が行われるのか紹介していきたいと思います。

作る前に知っておくべきこと

ビスポークシューズは、何よりも先ず、注文者の好みを把握するところから始まります。

履いてきた靴を見て、履き心地の好みを聞いて、デザインの希望を確認します。
ここで言うデザインには、つま先の形をどうするかなど、形状についても含みます。
この後の採寸の際に必要な情報を、予め知っておくことはとても大切です。

注文者の描いている靴のイメージを把握することができれば、そんなに時間を掛けなくても構いませんが、この時点でどういう靴を作るかの方向性はある程度決まっていなくてはいけません。
ある程度というのは、ここで決まっていなくて良いこともあるという意味です。
把握しておかなくてはいけない項目はきっちりと確認しておかなくてはいけません。

情報の使い方

必要な情報を把握した上で、採寸を行います。
作る形が分かっていれば、足に木型のイメージを重ねながら採寸することが出来ます。
希望の靴の形状を作りやすい足か、作りにくい足か、作りにくい足なのであれば、どこかに無理が生じるわけですから、その部分について、より詳しく足を観察しておく必要があります。
又は、足にストレスが掛かるのが嫌いな場合は、足に無理を掛けずにその形を作ることが出来るのかどうかを考えなくてはいけません。

採寸するポイントは人によって様々なので一概には言えませんが、多くの箇所を予め採寸するポイントとして決めている人も居れば、数箇所しか測らない人も居ます。
当校では比較的少ない箇所の採寸で木型を作成します。
やってみて、必要な箇所を実感したら、増やしていけば良いです。
把握した注文者の好みに合わせるためや、足の特徴から、必要な箇所があればその都度必要な箇所を測れば良いと考えています。
そのあたりは経験によって自分のスタイルを作るしかありません。
初めから沢山の箇所を測ることを決めつけて教えられてしまうと、「こういう足のときにはここの部分の状況を把握しておく必要がある」ということを、自分自身の経験で積み重ねることができません。

情報不足の影響

たまに以前教えていたときの生徒から、顧客の木型の相談を受けることがあります。
これより先の工程になりますが、採寸して、木型を作って仮合わせをした後、木型に修正を加えます。
このタイミングで、どう修正したらよいのか分からないという相談を受けたことがあります。
その時に私が、この方の好みは?とか、普段はどういう靴を主に履いて、ご注文いただいた靴はどんな靴なのかを聞いても、把握していませんでした。(その当時私が教えていたのは木型ではありません)
相手の好みや普段の靴についてが分かっていないと、仮合わせのときに、製作者からすると、「ぴったりだな」と思っても、注文者からすると「きつい」という風に、感覚にズレが生じてしまいます。
そもそも、注文者の意向が採寸に反映されていないということですから、デザインはともかく、足入れ感について、うまくいかなくても仕方がありません。

まとめ

つまり、
「作るものは靴だけれど、足の寸法情報だけではうまくいかない」
「寸法情報を活かすには、事前に必要な情報を把握しておくことが必要」
「きちんと整理されたカリキュラムで、順序良く経験を重ねることが大切」
ということです。

福岡市の接骨院で足の見方とインソ-ルについて講習を行いました

以前からお付き合いのある、福岡市の接骨院グループの全体ミーティングでインソールと足の話をしました。
スポーツ選手の来院も多いところで、7,8年前からインソールのオーダーをいただいておりました。
以前にも話をしに伺ったことがありました。
しかし大分前のことなので、グループ店舗が増え、スタッフが増えたので、インソールについて良く知らないスタッフが多くなってきてしまったそうです。
そこで、その方たち向けに話をしてほしいという要望を頂いておりましたので、福岡のほかの仕事の日程を調整して出張してきました。

全員で足型を採るところから始めて、その後は実際にそこにいた方の足について話をする形で進めます。
過去、足にトラブルがあったことがある、又は現在トラブルがある方の足で行いました。
採った足型からわかる足の特徴と、実際の足を見ることで分かる足の特徴をチェックし、その結果とトラブルとの関連性をお話しました。

スポーツをしている方の来院が多いだけあって、スタッフの方も学生時代に競技をしていたり、現在も趣味で続けている方が多いようです。
ですから、質問もかなり積極的で、一人ひとりの足でかなり突っ込んだことをお話しすることになりました。

X脚で内側に足が倒れているのに捻挫癖のあるスタッフさんの足で起こっていることでは、話をしていていながら、ついつい私も興味がわいてしまいました。
もっと掘り下げてチェックしたかったのですが、時間の都合もあって叶いませんでした。
ほかにも、シンスプリントになりやすい典型的な足や、靴を履かない競技をしていた方の筋肉が非常に発達した足など、よくある症例の実例や、めずらしい状態の足についてもお話しすることが出来たのは良かったです。

以前からいらして、すでに足型を採ってインソールのオーダーに関わってこられたベテランのスタッフさんほど実際の現場に即した的確な質問が多かったです。

今回のような話が出来ると、治療の中で足の特徴について注目する様になります。
現在の症状と足の特徴をうまく結び付けて考えられると、治療方針にも影響が出てくるはずです。

また、患者さんからの依頼を受けて足型を採った際に、足の特徴について患者さんに説明できるようになって、患者さんも、ただ足型を採るだけよりも喜んでくれます。
そういう説明があると、出来上がってきたインソールへの親しみも増すものです。

こういうことをきっかけに、治療する過程で、足元から身体を見る習慣がもっと普通になってくれるとうれしいですね。

ヤハズ鏝(ゴテ)-希少な存在になりつつある道具たち

日本で靴作りの道具を作っている人がどんどん減っている。
いや、それは数年前の話か。いまやどんどん減るほどいない。それどころか、ほとんどいない。
海外でも減ってはいるが、まだ作っていて、日本でも輸入している人はよくいる。

先日、日本製の新品だが昔作られた靴作りの道具を沢山見た。珍しい道具の、始めて見るサイズの物等あって、それはまだ新品だったが、製造は昭和40年代だった。

つまり、新品の道具はどんどん減り、作り手は既に居ないと考えるほうが正しいのかもしれない。

そんな道具の中に、コバ鏝(ゴテ)というものがある。靴底の側面をカチッと極めるための道具だ。

こういうコバ鏝が、幅や形でいろいろと必要な人というのは、たいてい手製靴の職人なのだが、中でも手縫いの靴を作る人には必需品である。

昔の職人は、こうした鏝(コテ)類を、正月に作ったものだと、私が初めて靴作りを教わった方は言っていた。数年前に亡くなられたが、ご存命なら90歳を越えていらっしゃる。だから戦後すぐ位の話だ。

今の靴作りをする人たちも当然、熱心にこうした鏝を作っている。作っているというのは言いすぎか、仕上げているといったほうが言いかもしれない。

普通、鏝(コテ)類に限らず靴の道具は、そのままでは使えない。

きれいに形を整え、磨いてつるつるにしてから使う。
この作業は行うが、自分の好みに合わせてゼロから作るという人はあまり聞かない。

私は必要な場合は自分で自分の好みの幅のコバ鏝(ゴテ)を作る。

最もポピュラーなコバの形は角型だが、上下の角を大きく落として、側面を2つの斜面で構成するコバの形で、「矢筈(やはず)」というものがある。

このヤハズのコバ鏝(ゴテ)も見かけることが少なくなったため、自分の仕上げたいと思う形にするには、そのサイズの鏝(コテ)を自分で作る必要がある。

自分の思い描くコバに仕上げるのに必要なコバ鏝(ゴテ)の幅は、数を作るとわかってくる。
そのコバの幅に仕上げるためのコバ鏝(ゴテ)は、どうしても自分で作るより仕方が無い。

今後コバ鏝(コテ)が全く手に入らなくなるとは考えにくいが、思い描く靴を思い通りに作るための道具が世の中に無い場合、自分で作る必要が出てくるかもしれない。
今後の靴作りには道具作りも必要な能力の一つになるだろう。

921において、通常カリキュラムでコバ鏝を作ることは無いが、特別授業や、個人での取り組みはサポートする。

やり始めると没頭してしまい、時間も忘れ、食事も後回しになってしまう、ある意味で危険な作業だ。

靴作りをやるなら、この面白さもぜひ味わってみて欲しい。

靴と医学を結びつける学校とは?足と靴の学校921で学ぶこと

靴の学校というと、靴作りを教える学校と、既製靴の販売のための健康や医療知識のセミナーの、大きく分けて2つに分かれます。

既製靴販売のための健康医療セミナーは、商品知識を深めたり、接客トークに専門知識を活かすためのセミナーです。
靴作りは体験として取り入れていたとしても、それによってオリジナルの靴を作って販売するほどの技術習得はできません。
また、既製靴を調整するための簡単な材料加工のセミナーもありますが、それもまた数時間手ほどきを受けるだけでは、身につく技術も基礎の基礎と言ったところです。

靴作りを教える学校では、自分のペースで靴作りを学ぶところと年間のカリキュラムに沿って学ぶところの違いや、製法などの違いはありますが、目指すところは、自分の思ったとおりのデザインで靴を作れるようになるということです。
「思ったとおりのデザインで」というのが大事です。
あくまでも手製靴のテクニックが学びたいという人にはそれについてのみ取り組む学校も良いかもしれません。しかし、実際の現場において、足についてなんら不満やストレスを感じたことが無いという人はごく少数です。

では921ではどうかというと、「靴と医学」を教えます。
靴作りを通じて靴を学び、思い描くデザインを靴として完成させる技術を身につけます。そして、実際に治療をするという目線で身体について学びます。そのうえで、「靴と医学」を結びつけて考えることを教えます。
これが出来ることによって、足のトラブルだけでなく、姿勢が関わる全身の悩みに対して、足元から「靴」によって「健康」を提供出来るようにします。

「靴」と「医学」を結びつけるわけですから、靴が作れることと、医学的な知識があるということはその準備段階です。
当然、靴が作れるようになることが目的のほかの学校に比べてとてもハードです。

1年目で、この2つの基礎を身につけていただきます。
2年目ではそれらを基にして、靴と医学を結びつける考え方やその考えを形にする製作を行います。

1年目でも応用についてお教えしますが、技術と知識が伴う必要がありますので、カリキュラムの後半から少し取り組むことになります。

2年目では、靴作りについて、手製靴の高度なテクニックも身につけます。
たいていの靴学校ではこれが売りとなるでしょうが、921ではあくまでも学ぶ事柄の一つです。
ですから、授業の予定は授業内でこなし、授業外の時間は課題をこなしていただきますので、かなりの気合が必要になるでしょう。
のんびり自分の作りたい靴が作れるようになりたい人は、ほかの学校をお勧めします。

また、921の靴作りのカリキュラムについて、別のブログで、実際の靴作りを通じて紹介しています。
靴作りという、普通の生活では接することの無い技術について、具体的な製作工程を分かりやすく解説しているつもりです。
「アイデアから靴を作っていく」

プロフィール

靴学校@村山孝太郎

足に悩む人は、自分の悩みをどこに行けば相談できるのか分からない人が多い。ルッチュでそうした悩みが解決できると、「長く悩んでいた、一生続くものだと諦めていたのに」と、感激して涙する人もいる。オーダー靴の顧客も例外ではなく、何らかの足の悩みを抱えている。
「今靴業界に必要なのは、健康をうたい文句にした商品ではなく、足と靴と全身の健康に関する専門知識を持って顧客と接することのできる人材だ。そのために必要な、解剖学、運動学、小児の足やスポーツ現場の足、手製靴作りと整形靴作りといった幅広い専門知識と技術を教えなければならないのに、そういう学校はどこにもない。それをきちんと教えることのできる学校が必要だ」という思いは日に日に強くなった。
待っていても誰もやらないなら、その学校を自分が作ろうと決意し、足と靴の学校921を設立する。

この学校は、複数の専門的な知識と技術を学び、その上でそれらを結び付ける授業を通じて、どんな足の悩みにも対応できる知識と技術として結実させる。
そのために、解剖学、運動学、小児の足やスポーツ現場の足、手製靴作りをそれぞれの専門の方に講義をお願いした。そこに、整形靴やインソール製作の技術と、各知識と技術を結びつけるための講義を、私が担当する。他にも、新しい情報や技術、必要だと感じたことについては、特別講師をどんどんお願いし、知識の幅を広げていきたい。

多種多様な足の悩みに対応できる人材になるために、広く専門分野を学ぶ場を提供する。学生には、自身の長所や特性に気づきながら成長し、才能を開花させてほしい。そして、靴を通じて「わくわく」と「ときめき」と「感動」を社会に広める喜びを感じて欲しい。

この学校の卒業生が活躍することで、ひとりでも多くの人に自分の足で歩くことの喜びを提供したい。その喜びを増やして、日本をハッピーにする。それがこの学校の目指す未来である。